CYEST DEEP INSIGHTSレポート『元キーエンス海外事業部長が語る!中小・ベンチャー企業が実践できる「最強営業組織構築メソッド」[基礎編]~キーエンスが考える営業の定義とは~』(前編)
講師:元キーエンス 海外事業部長
藤田孝さん
[経歴]
・関西学院大学 経済学部卒業
・1982年にキーエンスに入社
・1998年にキーエンスの海外事業部長に就任
・本社と一体運営する海外事業運営の構築
・海外事業をゼロベースから立ち上げ、海外シェア50%までに貢献
・現在 CYEST登録プロフェッショナルとして活躍
近年、多くの中小・ベンチャー企業が自社の営業活動の効率化に取り組んでいます。
しかしながら多くの企業が属人性が高く、汎用性の低い営業スタイルから脱却できず、組織体制の構築方法や営業プロセスの仕組み化に課題を感じている状況にあります。
経営陣や営業部長の方は次のような疑問や悩みを抱えています。
・どのような組織体制・営業プロセスを採用すれば最大限収益を伸ばせるのか
・効果的な営業支援ツールの活用方法を知りたい
・営業の属人化を解消し、社内でノウハウを一元化したい
今回、CYEST DEEP INSIGHTSでは、独自の営業戦略で成長を遂げた営業利益55%の超大手メーカー、元・キーエンス海外事業部長の藤田孝氏を迎え、中小・ベンチャー企業でも実践可能な高収益型営業組織の構築方法について語って頂きました。
本記事では動画のポイントを前編、後編の2回に分けてレポートいたします。
※本編の動画視聴をご希望の方は下記URLよりお申込ください。
https://form.cyestc.com/form/20240322_webinar_applicationform
目次
収益の低い会社は「営業の定義がぼんやり」している
キーエンスは”経営理念が高収益型”
長谷部
キーエンスの営業組織は高収益型と言われていますが、どのような組織だったのでしょうか?
藤田
まず簡潔に申し上げますと、キーエンスでは会社の経営理念自体が「高収益型」の経営理念だったということです。
経営理念のうちの2つがそれを表してます。
一つ目は「企業の永続」です。キーエンスでは「会社を永続させる」ということが経営理念となっています。
永続するためには利益を上げ続けないといけない、それも単なる利益ではなく、他社を圧倒するぐらいの利益を上げ続けないといけないということです。
二つ目は利益を上げ続けるためには、「最小の人と資本で最大の付加価値を上げること」が必要なのでこちらが経営理念になってます。
この二つの経営理念を実現するためには、お客様に役立つ提案をする必要があり、そのためどのような営業組織がベストな選択肢ということを考えた結果、今の直販型コンサルティング営業を選んでいます。
それが付加価値最大化、ひいては企業の永続に繋がるというコンセプトになってる会社だと理解いただいた方がわかりやすいかなと思います。
営業の”密度”に圧倒的な差がある
長谷部
今出てきたお話を少し具体的に伺いたいのですが、そもそもなぜキーエンスは、高収益型の営業組織を実現できたのでしょうか?
他の企業と何が違うのでしょうか。
藤田
2015年にキーエンスを卒業後、様々な企業の営業のご支援しているのですが、キーエンスで当たり前にやっていたことが、実は当たり前ではなかったと感じる機会に遭遇します。
キーエンスと他社の違いについて端的にご説明すると、キーエンスでは「営業にかける密度が非常に高かった」ということになると思います。
長谷部
営業にかける密度ですか?
藤田
どういうことかと言いますと、支援先の皆様に「営業とは何ですか?」とご質問した時、皆さんの営業の定義がちょっとぼんやりしているのですよね。
キーエンスでは、営業を「お客様と接点を持ち、顧客価値を引き出して、最大化をする」と定義しています。この定義が先ほどから申し上げているような付加価値最大化に繋がるのです。
他社さんの例を挙げると、1日8時間のうち、営業にどのくらいの時間を使ってますか?とお伺いすると、驚くほど少ないケースがあるんですよ。
長谷部
なるほど。
藤田
ある企業さんでは営業の時間が2割ぐらいとか。
他の時間はどうしてるのか?と聞くと、社内の調整や、納期の確認したり、本来の営業の定義とは違うところでお仕事でやり「忙しい忙しい」と言ってるのです。
これがキーエンスの場合は8割9割ぐらい営業に充てられています。
私も現役時代を振り返ると、1日中お客様に買ってもらうことをだけに集中してればよかったという記憶があります。
長谷部
なるほど、そこで仕組みが必要だったわけですね。
藤田
キーエンスを卒業してから、会社に「営業に集中できるような環境」を整えてもらってたということをとても感じますね。
この「営業の密度」がやはり他社を圧倒しているのではないかと私は感じます。
要するに他社は「仕事の合間に営業してる」、キーエンスの場合は「営業の間に必要な業務をやる」という形で、お客様との接点に最大の時間を使っているという点が大きな違いではないかなというふうに思います。
キーエンスで付加価値が最大化される仕組み
“付加価値=お役立ち度”、付加価値額を80%と定義し、全社員で追及
長谷部
営業に定義があり、その密度が違うということですね。
先ほどお話しいただいた中で「付加価値を上げることに注力されている」とありましたが、この付加価値はどのように上げてらっしゃったんですか?
藤田
これはやはりキーエンスの営業の皆さんはお客様がどんな製品を作られてるか、どんな工程で作られて、どんな機械で、設備があり…など、まずはお客様のことをよく知ろうとものすごく研究されています。
長谷部
なるほど。
藤田
そのうえでお客様に自社の商品がどう役立つかという提案を考えることに注力しているということが大きいんじゃないかなと思います。
長谷部
とにかく売上!売上!という前に、顧客をよく見て勉強し、何があったら喜ばれるかという点をよく考えているということでしょうか。
藤田
そうですね、実際にお客様の製造不良が減るなど、キーエンスがサービス提供することで、お客様の会社がどのように得をするか、喜ばれるか、その「経済効果」を追求してるということが大きなポイントではないかなと思います。
長谷部
営業活動が付加価値を最大化される仕組みについて、どのようなメソッドがあったのでしょうか?
藤田
複雑なものではありません。付加価値イコールお役立ち度と考え、お客様に対してどのように役に立ってるかという点を追求しています。
例えば鉄がありますよね。鉄の原石、鉄鉱石はそれだけでは付加価値生まないので、大体1kg当たり10円です。これが鉄板の形になると100円、さらにそれが自動車に使われる後半になると1kgあたり1000円と言われてます。
キーエンスはどこを目指してるかというと、1kg当たり1万円の値打ちのあるものを世の中に商品として出そうっていうのが基本の考え方です。
藤田
キーエンスの場合、大体原材料が20ぐらいなんです。これをお客様に採用いただいた時点で大体100になるくらいのイメージですね。
だから一般的に粗利益という考え方で言うと、8割粗利益で、ここから一般的な販管費除くと営業利益50%が超えてます。
だから付加価値を80%と定義、これを基本の構成としているのです。
長谷部
なるほど。
藤田
付加価値を最大化するために三つのポイントがあります。
一つは商品価値です。
原材料に手間を加えて、機能的に優れたものを作る、これが商品の機能的価値ですね。
二つ目は顧客価値です。
営業がお客様にとってどれだけ価値のあるものになるかということ、提案をして採用いただくと。この顧客価値を高めるために、キーエンスでは基本的にお客様へ直接販売する「直販体制」を取っています。
3つ目が会社全体のブランド価値。
キーエンスを使いたくなる、キーエンスを使い続けてもらうため、会社として提供できる全体としてのサービスですね。
例えば、キーエンスでは「即納」というのが非常に特徴的なんですね。
当日受注したものは当日出荷して翌日にはお客様の方に届けています。
今こそAmazonのプライム会員とかやってますが、キーエンスは全世界で昔からやってるんです。
だからお客様は不要な在庫を持たなくてもいいし、キーエンスに電話1本すればすぐ商品届けてくれるということを昔からやっています。
長谷部
そういうビジネスモデルなんですね。
藤田
その辺りを合計すると、20で作ったものが100で採用いただける。80が付加価値となって残っていくってそういう図式になっています。
営業利益50%以上になるということが会社運営の中に仕組みとして根付いてるわけです。
全社員がこれを最大化するためにどうしたらいいのかっていうことを考えることに注力してるということですね。
※後編に続きます。
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